誰もがコンテンツを生み出せる世界へ。クリエイターを支える「ビジネス版TikTok」の勝算

2019/07/25

スマホの普及と通信環境の整備により、この数年で動画コンテンツを見る機会が増えている読者も多いのではないだろうか。

動画制作をゼロから学ぶのは難しく、コストがかかる。そんなイメージを払拭するのが、誰でも簡単に動画が作れるSaaS型動画自動生成ツール「RICHKA(リチカ)」。いわば企業向けに特化した”ビジネス版TikTok”だ。

動画広告市場の急激な伸びも追い風となり、企業のニーズを掴み国内における動画自動生成ツールの導入数はNo.1。サービスを運営するカクテルメイク株式会社は、2019年5月にはシリーズAの資金調達を発表し、動画領域のスタートアップとして注目を集めている。

ただ意外にも同社CEO松尾幸治氏は動画だけにこだわっているわけではない。

インターネットの変化によってもたらされるリッチコンテンツの未来とは。

5G時代を代表する会社を目指す

RICHKAはどのようなサービスですか。

カクテルメイク CEO 松尾さん(以下、松尾) 簡単に動画クリエイティブがつくれるサービスを企業向けに提供しています。主にインターネットの広告代理店を中心に現在累計200社以上に導入いただいています。

15秒程度の短い動画コンテンツに特化していることが特徴です。私たちがスマホを開くのは1日150回、1回あたり平均約1分なので、5-10分以上のコンテンツは見られにくい。なので、長い尺の動画をつくる部分は削ぎ落としています。

通常動画制作は時間もコストもかかるのですが、RICHKAでは知識がなくても、PCを使えたら簡単につくれます。写真や動画素材をドラッグ&ドロップして、テキストを入れたら出てくるんですよ。最高齢だと70歳の方が、10分のレクチャーだけで作成できました。

大きく変化するインターネット業界において、自社の立ち位置をどう捉えていますか。

インターネットは10年周期で大きな波があると思っています。

2000年代はADSLの普及でインフラが整い、あらゆる情報がインターネットへ移りました。2010年代はiPhoneの普及でハードウェアが整い、PCからスマホの流れがきました。2020年からは、5Gの普及でソフト面が大きく進化していくと思います。

RICHKA 1

(出所:カクテルメイク 会社説明資料)

10年周期の大きな変化の中で、メガベンチャーがどんどん生まれているので、次の転換期である5G時代を代表する会社でありたい。今までのインターネットは文字主体でしたが、動画、AR、VRなどリッチコンテンツにどんどん変わっていくと思うので、そこに張っています。

動画広告市場は今後どうなると思いますか。

インターネット広告全体に対する動画広告市場のシェアは今後も伸びると思います。

矢野経済研究所の予測によると、2022年には国内市場で1兆円超え、ネット広告の半分ぐらいが動画広告になるそうです。

RICHKA 2

(出所:カクテルメイク 会社説明資料)

今はたまたま日常的に触れるサービスで動画系のサービスが増えてきたので、今までの広告の形が合わなくなってきただけな気もしますが、検索型の広告が動画に変わるとかなり増えると思いますね。

今はGoogleで検索するとYouTubeの動画が上に表示されますよね。同じように今後Yahoo!で検索しても動画コンテンツが出てくる未来はあると思います。そのときRICHKAがプラットフォームになっていたいです。

TikTokから学ぶ、制約の中で自由につくる感覚

RICHKAで簡単に動画が作れる仕組みと、企業の方の具体的なニーズを教えてください。

わかりやすく言うと、バリュエーションが豊富な「ビジネス版TikTok」です。

TikTokは踊ってみた・歌ってみたなどのお題があった上で、真似てコンテンツを作るじゃないですか。

RICHKAも全く同じで、企業の情報発信に特化した形で、クリエイターさんが毎月100〜150パターンのフォーマットを作っています。企業の方はそのフォーマットを使って動画を作成しています。

例えばメディアや出版社の方は、テキストだけだと限界が来ているからコンテンツを動画にして発信したいという要望が多いです。

広告代理店の方は、インフィード広告をある程度のクオリティを担保しながら簡単につくりたいニーズが増えてきています。

最近面白いなと思うのが、採用の求人動画や社内報としての用途です。全社員の10秒自己紹介や、 イベントの報告を動画コンテンツにしてつくる例も出てきています。

ユーザーの使い方も多種多様なので、とにかく声を聞いて一緒に作っています。ベタですけど、ユーザーの声をめっちゃ聞くのだけは負けちゃだめだと思っています。

(画像:BigTunaOnline / Shutterstock.com)

TikTokが例に出てきましたが、参考にしている部分はありますか。


何でもできるように見えて実はTikTokの枠の中でやっているけど、ユーザーは自由につくっている感覚がある、という体験は参考にしてます。Instagramのストーリーズも同じ文脈ですね。

実は最初にRICHKAをリリースしたときに、誰でも簡単につくれるだろうと思ったらみんなつくってくれなかったんですよ。「簡単につくれるのは分かったけど、何をつくっていいか分からない」という声が多くて。

そこからは「どうやって人が簡単にコンテンツをつくれるか」にフォーカスしてきました。

動画編集サービス自体は昔からあるじゃないですか。結局使われないのは、ユーザーのモチベーションを考え抜かなかったからだと思っています。

ゼロから何かを生み出すのではなくて、ちょっと制約した中で自由にやってくださいという提案の仕方をすると途端に人がつくり出すことがこの2年ぐらいやってきて分かってきたので、今の形に至っています。

いま(※2019年7月現在)RICHKAで動画が月10,000本ぐらいつくられていますが、その数を増やすところは頑張っていきたいです。

クリエイターに還元する仕組みづくりに燃える

今後、RICHKAでどんな未来を実現したいかお聞かせください。


「動画自動生成ツール」から変わる可能性はあると思います。

今は企業向けにSaaSとして提供していますが、本質的にはヒトがゼロからコンテンツを生み出すお手伝いをしていると思っています。動画も1つの手段でしかないので、将来的には動画に限らないし、BtoCにも展開するかもしれないです。

またRICHIKAの裏ミッションとして、クリエイターの方にストックで還元していけるような仕組みをつくりたい。

クリエイターはエンジニアの方々と違って、納品したら仕事が終わる単発ショット型のビジネスです。それはつまり動画を作り続ける必要があるので、自分が体調を崩したらもう終わりということ。

僕自身も以前動画制作会社をやっていましたし、周りにクリエイターも多かったので、その仕組みを変えたいという思いは強いです。

いまRICHKAには継続的にお仕事を発注しているクリエイターが100人ほどいます。 空いた時間でつくってもらって、サーバー上にクリエイティブを置いていただき、ユーザーさんが使ったときにストックで還元できる。そんな仕組みをRICHKAでつくることに燃えていますね。

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編集・写真:ami

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