徹底したプロダクトへのこだわり。「日常と非日常のリンク化」に挑んだ6か月の軌跡

2019/05/15

無から有を作りだすAugmented Reality、いわゆるAR。

「拡張現実」と訳されるその技術は、バーチャル映像をリアルと重ね合わせることで、あたかもそこに実在するかのようなユーザー体験を提供する。

そんなAR領域で、エンタメを切り口にコンテンツを提供する会社がある。コンテンツのみならず、テクノロジー領域もカバーする「プレティア株式会社」だ。

未開拓マーケットである「AR×エンタメ」に挑む難しさ、そんな状況の中でもぶらさなかった「こだわり」について、共同創業者の李禎み氏に伺った。

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日常の再発見に繋がる「非日常体験」

プレティアさんが展開している事業についてご説明いただけますか。

プレティア 李さん 私たちプレティア株式会社は、ARエンターテイメント領域に取り組むスタートアップです。具体的には、渋谷で体験いただけるAR謎解きゲーム「サラと謎のハッカークラブ」と、ARクラウドというARコンテンツを簡単に現実空間上に紐付けられる技術を開発しています。

コンテンツとテクノロジーの両方を握ってAR界のプラットフォーマーになる野望を抱いています。

「サラと謎のハッカークラブ」の第2弾をリリースされましたよね。

実世界に仮想世界をリンクされせることで、今まで気づかなかったような新しい発見を、見慣れた渋谷の街でもして頂くのが今回の目標の1つでした。 ※プロモーションビデオはこちらから

実際体験して頂くと、普段何気なく通っていたり、慣れ親しんでる道や毎日行くようなエリアでも、まだ気付いていないスポットや新たな発見が結構あったりします。でも、それらは意識しないと見落としてしまいます。

そこで、弊社のサービスでは、日常の再発見に繋がる非日常体験を感じて頂くために、ゲーム内で通るルートや訪れる場所はかなりこだわっています。

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渋谷の様々な場所に再発見をするための「謎」が隠されている

今までも世の中に謎解きゲームはありましたが、その中でもプレティアさんの第1弾は大きな反響を呼んでいました。

この規模で町全体を巻き込むような大がかりなAR謎解きゲームを作ったのは私たちが初めてだったので、いち早く謎解きゲームや脱出ゲームファンの方たちの興味を惹くことができました。

実際にリリースしてみると、口コミから今まで遊んだことないタイプの謎解きゲームとして一般の方々にも認知が広まりました。また、そのタイミングで「渋谷を再発見できて楽しかったです」といった体験談を多くいただけたことで「これはウケるぞ」と確信し、去年の秋に第2弾の作成に動き出しました。

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開発を開始した時のツイート

1作目がうまくいったとなるとプレッシャーは大きかったのでは。

大きかったですね(笑)。

第1弾をリリースした時は、まだ会社としてアーリーステージの会社だったので、名前を知っている人もいないですし、「サラと謎のハッカークラブ」の認知度もほぼありませんでした。それこそ、無名の会社がやっている無名のサービス状態だったので、失うものがありませんでした。

しかし、第2弾では既に私たちのことを知っているお客さまがいます。また、「自分たちの最大限の力で、お客さまが喜ぶサービスをつくる」ことを徹底しているからこそ、「第1弾を越えるクオリティーのサービスをつくらなければならない」プレッシャーは思った以上に大きかったです。

第1弾を遊ばれた方には、第2弾がいろいろな面で進化しているのが分かると思うのですが、第1弾と2弾で別のアプリをつくってリリースしたのも、リピーターの方に新しい発見を提供できる設計にしたいと考えたからです。

未知の領域に挑むことの意味

リリースまで順調でしたか?

それが全然そんなことはなくて。最終的にはリリースを延期せざるを得なくなってしましました。

第2弾もそうですが、新機能についてはすべてが0からのスタートですし、誰もやったことのない物をつくろうとしているので、「こういうものを開発したい!制作したい!」と思っても、どのくらい工数と時間がかかるのか、正確な見積もりが全然できなくて。

どんなに優秀なエンジニアでも、やったことのないタスクにかかる時間を正確には予想できないので、最初から多めに時間を見積もってはいましたが、最終的には予想より全然時間かかるケースがどんどん判明してきてしまって。結果、リリースを延期せざるを得なくなってしまいました。

ストーリー構成や体験の設計も、テストを重ねていく中で「こうしたほうがいい、ああしたほうがいい」みたいなのが出てくるので、開発チームは、全体のスケジュールを敷くのに相当苦労していました。未知の領域に、第一人者として取り組んでいる分、チャレンジングな出来事が予想以上に多いです。

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テスト時の風景

当初、第2弾のリリース日は2月20日で設定し、実はプレスリリースも出していたのですが、その2週間前に「サービスは出せるかもしれないけど、お客さまに喜ばれる体験のクオリティを担保できない」という理由で、3月9日に延期しました。

しかしまたもや3月9日の1週間前になって、デバッグ(プログラムのバグを発見・修正する作業)が足りないことが分かり、苦渋の決断で再度延期することになりました。その時は、すでに予約してくださっていたお客さまもいらっしゃったので、被害を被るお客さまに関しては1人1人にメールを打って、「返金させてください」と謝罪させて頂きました。

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リリース延期時のツイート

そして3度目の正直で、ようやく3月16日にリリースできたという経緯です。

社内でリリース時期を「延期する、しない」で揉めませんでしたか。

その戦いは、ほとんどなかったですね。

「お客さまに喜ばれるものをつくる」想いは、チームの価値観としてみんながもっているので、デバッグの様子や開発状況のアップデートを聞いて、「これだとお客さまに喜ばれるクオリティじゃないよね」という感覚は共通して持っていました。なので延期の決断は、全員納得した上で決まりました。

絶対に譲れない「軸」

苦労の末、第2弾生まれて1か月が経ちますが、反響はいかがですか。

おかげさまで、第1弾からのリピーターのお客さまには、パワーアップした部分がきちんと伝わっているようで、すでに第3弾もやることをアナウンスしているのですが、「どんどん期待感が高まります」と言っていただくことも多いです。

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第2弾では3Dオブジェクトが出現

第2弾では第1弾に比べ、ARの技術的な部分に非常に力を入れて実装しました。しかし、まだ新しい技術なのでお客さまから「操作が難しい」と率直なフィードバックも頂いています。次はそこを解決して、更に楽しんで頂けるものをつくりたいですね。

ただ、いろいろな課題がある中でも、「すごい楽しかったです」とおっしゃってくださる方が多いので、苦労してでも軸をぶらさずに作り切ってよかったとチーム一同感じています。そういった声を聞けると報われた気がしますし、やってよかったと実感できます。

第3弾ではどんな部分にチャレンジするのですか。

続編を出すたびに必ずパワーアップをさせるのは、お客さまとの約束でもあるので絶対に守っていきたいです。「前の作品の焼き直しじゃん」とは絶対に感じて欲しくないです。

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プレティアの行動指針でもある5つのValue

次の作品も苦労の連続になるのは目に見えています。(笑)それでもやっぱり、新しい技術をどんどん取り入れていきたいですし、新しい機能を必ず1つは実装するとチーム内でも決めています。

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ゲーム中は現実空間と画面をリンクさせてプレイする

ARエンターテイメントの可能性

新しい要素を必ず取り入れるとなると難しいと思うのですが、ほかのゲームからインスピレーションを得たりしているのですか。

実は私自身、ゲーマーの真逆にいる人間なんです。(笑)

両親の教育の方針でゲームをやらせてもらえなかったので、家にゲーム機が一切なく、ゲームに馴染みがありませんでした。唯一記憶にあるのが、中学生ぐらいのときにおじさんからプレゼントされた任天堂DSでリズムゲームやったことくらいです。

それこそ先日、友人の家で任天堂のSwitchでスマブラ(任天堂の格闘ゲーム)をやったときも、今まで遊んだことがなかったので、ゲームに参加したはいいものの、誰を倒すゲームなのかわかりませんでした。(笑) それぐらい、私自身はゲームとはかけ離れている人間です。

ただ、なにもエンタメにはゲームだけではなく、映画や音楽、ドラマも含まれていますし、そういったところからインスピレーションを得ることも大切かなと思っています。

もちろん、今のままではあまりにゲームに関して無知なので、そこは危機感を持ってプライべートでいろいろ勉強しています。(笑)

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プライベートのゲームに関する勉強も本格的でした

もう1つだけ補足すると、現在私はゲームを届けるほうにコミットしているので、ゲームをつくるチームはしっかりゲーマーが集まっています!

ープレティアさんはARゲームをつくっていますが、ゲーマーだけが集まっているわけではないのですね。 そういうわけではないですね。プレティアができてからいろいろな歴史がある中で、ARゲームの「サラ謎」にたどり着いたのが1年前です。

もともと「ARやVRといった新しい技術を使い、人と人との豊かな関係構築に貢献したい」という人が集まり始まったので、ゲームをつくりたいメンバーが入ってきたのは、実は最近です。

ということは「サラ謎」以外の事業プランもあるのでしょうか。

冒頭で会社の紹介をするときに「AR謎解きゲームの会社です」とは言わずに、「ARエンターテイメントの会社です」と言ったのにもこだわりがあって、「サラ謎」以外にも別の領域で話を進めています。

まだ公開のタイミングではないのでお話しできることはありませんが、謎解きゲーム「サラ謎」だけでなく、総合的なARエンターテイメントを、コンテンツからもテクノロジーからもつくっていくので、どうぞご期待ください。

ユーザーが自分でARをつくれるようになったら楽しそうですね。

いいポイントですね!

明言は出来ませんが、その領域もご期待ください!(笑)私たちの会社としても、ARの未来を切り開く第1歩として「サラ謎」があるので、これからもコンテンツの幅や種類を広げていきたいと思っています。

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文・写真:ami編集部