仕事でも、プライベートでも「コミュニティ」が関わらない場面はない。

一方で、人によってコミュニティの定義が異なり、体系的な知識も整備されていない。

その課題の解決に挑んでいるのが、企業向けコミュニティタッチツール「commmune」だ。定量的なユーザーデータを元に、企業とユーザー間の共創関係の構築を支援している。

ユーザーコミュニティを、どのようにしてつくるのか。サービスをつくるなかで見えてきた、コミュニティづくりの肝にせまる。

コミュニティは手段の1つ

「コミュニティタッチツール」とはなんですか?

カスタマーサクセスというワードはご存知ですか。サブスクリプションモデルやSaaSは、契約を継続されないとビジネスが成り立たないため、ユーザーが求めている価値を分析し、提供し続けることが重要です。それを担当しているのがカスタマーサクセスです。

そういった担当者が使う手段の1つに「テックタッチ」があります。数十社を対象にしたサービスであれば、人の手で対応できると思います。しかし、音楽ストリーミングサビスのSpotifyのように、膨大な数のユーザーがいる場合、全てを人の手で対応するのは不可能ですよね。

そこで、テクノロジーを使い、作業を自動化したり、自動的に解約の懸念がある人を検出して対応しています。それをテックタッチと言います。

このようにカスタマーサクセスが、顧客との共創関係を築くための手段としてコミュニティを使ってユーザーにアプローチする意味で、「コミュニティタッチ」と言っています。

コミュニティをつくることは目的ではなく、あくまでツールの1つ。それを伝えたくてこのワードを使っています。

コミュニティというワードは含まれる意味が多く難しいですよね。

難しいですね。

コミュニティという言葉をこれからも使うべきか、チームでも議論になっています。

最近、出資を受けたUB Venturesと話す中で、2つの問題に気付きました。

1つ目は、人によってコミュニティの定義が異なっていること。そうすると人によってサービスに対する解釈が異なり、結果的に私たちが目指すものとユーザーの期待値がずれてしまうかもしれません。

2つ目は、言葉のインパクトが強いことです。

「コミュニティ〇〇」と書いても、後ろに付いた言葉の存在感が弱くなってしまいます。それにより、本来顧客になりうるユーザーに届きにくくなっているのではないかと。

私たちのサービスは「企業とユーザーの断絶をなくして距離を近づけること」を目指しています。これを的確に表しているワードを絶賛募集中です(笑)。

コアの価値は「ユーザー体験」

commmuneではどのような課題を解決したいのですか。

企業とユーザーが共創関係を作れるように支援したいです。

サブスクリプション型のビジネスで必要なことは2つだと思います。共創関係をつくることと、対象となるユーザーを明確に定義することです。

その中でも前者にコミュニティを活かして取り組みたいです。

ビジネスモデル図解ツールキット コミューン

たとえば、「サービスの使い方が分からない」ときに、コミュニティ内にいる誰かがそれに回答し、コミュニティ内で問題が解決される。これは1つの理想的な形ではないでしょうか。

ビジネスモデル図解ツールキット コミューン (1)

commmuneのビジネスモデル

企業が直接返答する方がユーザーにとってはいいのでは。

ユーザーは本当に「正解」を求めているのか。これはしっかり考える必要があります。

たとえば、YouTubeではユーザーの視聴時間を事業の目標値にしています。

「蝶ネクタイの結び方」と検索したとき、最もわかりやすい動画が1つ出て、30秒で悩みを解決できる形より、敢えていくつかの中から探す形式をユーザーは求めているのではないかと。

それに近いと思っています。同じことを言われるのでも、企業からなのか、ほかのユーザーからなのかで感じ方や満足度は違ってくるのではないでしょうか。

現状多くの企業では、オフラインのイベントやセミナーで、その体験を担保していると考えています。

それをcommmuneでは、オンライン上で実現しようとしています。

実際にそれを実現するのはかなり難しいと思うのですが。

難しいですね。

コミュニティが活性化してユーザー同士で助け合い、コンテンツが生まれる。それによって価値が増していく。この一連のサイクルをつくることはは。

ただ多くの場合、イメージはできても成功はしません。結局、主催者が次々とコンテンツを出さないと活性化しなかったりします。

そうなってしまうのは、活性化のサイクルが回る仕組みを戦略的につくれていないからです。

commmuneの結果を分析して分かったのは、「ライトユーザーとコアユーザーで必要なアプローチが異なる」ことです。

響く部分が異なるとは。

コアユーザーは「自分の貢献度」に対する認知や、貢献度に応じた企業からの承認を求めています。

これは、コミュニティを作ろうとしている方に理解されていることも多く、方法論も一定数あります。しかし、ライトユーザーに対するものは、ほとんどありません。

ライトユーザーに対しては「コアユーザーの熱量を広げることが大切」といった、根拠が定かでない方法論が多いです。

導入して頂いてる企業の1つにBASE FOODという会社があります。

BASE FOODでも、他の会社と同様にライトユーザーに対するアプローチに悩んでいました。彼らが運営しているFacebookグループでは、ライトユーザーのアクション率は、1桁%前半程度でした。

そこでcommmuneに移行したところ、アクション率が約25%に上がりました。

20190709 commmune高田さん

高田 優哉(たかだ・ゆうや)/ パリ農工大学留学、OECDインターンを経て、2014年東京大学農学部卒業。新卒でBCG 東京オフィス入社。在職中に 上海、LAオフィスへの出向を経験 2018年3月に退職しコミューン株式会社を共同創業。(写真:ami)

なぜそんなに上がったかというと、1つはインセンティブ設計を行ったからです。アクションをすると、オリジナルTシャツがもらえるといった施策を実施しました。

また、ユーザーの属性によって異なるユーザー体験を設計したからです。

ライトユーザーには、お勧めレシピが最初に表示される。コアユーザーには、一見変わったレシピが表示されるといった仕組みになっています。

そのようなユーザー属性に応じたコンテンツの最適化などを行える仕組みが、あるかどうかが重要です。これがコミュニティを活性化させるポイントではないでしょうか。

ライトなユーザーは、そうでもしないと楽しみを感じられず離脱してしまいます。

アクションをせず、見ているだけのユーザーもいますが、そこに対してはどのような対応をしてますか。

「見ているだけ」でもいいと思っています。

コミュニティはクラス運営に近いです。クラスの中での貢献度は、よく声を上げる体育委員が高いときもあれば、あまり話さない図書委員のときもありますよね。つまり、アクションの有無だけが評価基準になる訳ではありません。

アクション率(目標を達成した割合)だけを見るのではなく、アクティブ率(一定の期間内にアプリやWebサービスを利用しているユーザーの割合)も見るべきです。

とくにBtoBでは、アクティブ率が重要です。BtoBの場合、質問に対して回答するハードルが高いんですよね。なので、一般的にアクション率は低いです。

ただアクセス率は、うまくコミュニティが機能しているときは高くなります。こういった数値は、まだ世の中に出回っていないので、判断するのが難しくなっています。

反面、私たちはそういったコミュニティ運営における重要な数値基準を知っているので、ほかのクライアントに対してそういった部分を含めた価値提供ができると思っています。

20190709 commmune高田さん-5編集

(写真:ami)

シード調達で知った「正直でいる」重要性

シード調達を先日されましたがいかがでしたか。

後悔していることがあります(笑)。

別に嘘をついたわけではありませんが、正直にいることは大事だと思っています。 特にバリエーションの部分についてはそう感じてます。

起業したてであるシードの段階では、適正なバリュエーション評価をする指標がありませんよね。

サブスクリプション型のビジネスの場合、月次の売上×10~15倍を基準にしてバリュエーションをつけたりします。しかしシード段階は、プロダクトの顧客獲得数がそこまで大きくないので、チーム構成やマーケットサイズなど複数の要素を加味して決めます。

その際に難しいのが、そういった条件から導き出されるバリュエーションが適切かを私たち自身も分かっていなかったりします。そもそも適正とはなにか?という話もあります。

また、投資家はバリュエーションを下げたいものだと勝手に考え、起業家側もバリュエーションをむやみに上げてしまう場合があります。

そうすると、本当にこれは正しいのか不安になります。根拠になるストーリーやロジックについて、自分の中で考えきれてないからです。

私たちもシードラウンドでは様々な初めてが重なったことで、自分が感じている不明確な部分に対して、考えることを妥協してしまった部分があったなと。

仮に高いバリュエーションにしたいのなら、それ相応の準備をすべきだし、徹底的に考え抜く必要があると、調達を終えて改めて思いました。

本来は今おっしゃっていたようなことは、VCと一緒にやるべきなのに、それができなかったと。

おっしゃる通りです。

たとえば、「うちのサービスのバリュエーションは10億円です」と言ったとします。その後どのVCにも「それじゃ投資できません」と言われたら、今度は「やっぱり考えてみたら、5億円だと思います」と変わるのって変じゃないですか。

でもこういうことは結構あるのかなと思っています。なので、次のラウンドはもっと考え抜こうと思っています。

これから資金調達に挑むシードの起業家に伝えるとしたら、どんなアドバイスになりますか。

私が今回の調達で、できなかったことが2つあります。

1つは、中立的な立場からメンタリングしてくれる投資家を見つけることです。

今回の調達では、どうしても対VCといった一括りで見てしまった部分があり、VCの知識もありながら中立的な立場の人に、話を聞く機会が少なかったです。

毎回一発勝負で、投資家に「○○億円です」と提示し話がまとまらないような方法は時間がもったいないですし、生産的ではありません。そうではなく、事前にブラッシュアップをしながら行うのがいいと思います。

もう1つは、シード調達が終了していたり、シリーズAのスタートアップに調達案の壁打ちしてもらう方がいいと感じました。

事業アイデア自体に価値はありませんし、話したとしてもそのアイデアを真似されることはほぼないじゃないですか。なので、ストーリーラインやバリュエーションについて、経験者に聞いて、もっと質を上げてから調達に挑めばよかったと思っています。

今後、どのようにcommmuneをスケールさせたいですか。

やるべきことはシンプルで、今使ってくださっているユーザーの満足度をより高めることです。

やりたいことのイメージはあるのに、それに追いついていないのが実情です。そこをひたすら磨いていけば、必ず結果はついてくるはずです。テックスタートアップとして、テクノロジーでの課題解決にこだわりながらこれからも質を高めていきたいです。

20190709 commmune高田さん-7 (Conflicted copy from JV-5CD849BYQJ on 2019-07-10)

聞き手:松岡遥歌、文:町田大地

*情報開示:コミューンの株主であるUB Venturesは、ジャパンベンチャーリサーチと同じユーザベースグループに所属しています。

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