2019年上半期国内スタートアップ資金調達は1,675億円。自動車、宇宙関連で大型調達

2019/09/02

国内最大級のスタートアップデータベース「entrepedia(アントレペディア)」より、2019年上半期(集計期間:2009年1月~2019年6月)の国内スタートアップ資金調達状況を網羅的にまとめた資金調達レポートの決定版「Japan Startup Finance 2019H1」をリリースした。

本記事では、そのサマリーをお届けする。

2019年上半期資金調達額は1,675億円。前年並みの水準で推移。

2019年上半期における国内スタートアップの資金調達は基準日時点の観測において、1,675億円だった。

本記事では2014年以降のグラフを表示しているが、レポート本編では10年分の数値を確認できる

2018年比の進捗からみるとおよそ40%。しかし、昨年の同時期での2018年上半期資金調達額が1,732億円であったことから、ほぼ前年並みの水準といえる。

今回の調査において、2018年の資金調達額は4,210億円(前回調査比+8%)に。調査進行による全体の金額上昇幅に違和感はない。

前回調査(2019年2月21日基準)から、2018年は設立1年未満、10百万円未満の案件を中心に積み上がった。スタートアップが成長し、次のラウンドへ進んだ際にサイレントで実行されていたエンジェル・シードラウンドが判明したケースが増えたことが一因である。

2019年も調査進行により、とくに資金調達社数が伸びると想定される。

1社あたりの傾向をみると、上述のデータの特性から2018年は前回調査よりも数値は低くなっている。しかし、大型化のトレンドは変わっていない。

本記事では2014年以降のグラフを表示しているが、レポート本編では10年分の数値を確認できる

他方、2019年上半期は前年を上回る。これは、大型調達はリアルタイムで公表される傾向が強いため、高めに出ていると考えられる。

下半期の資金調達に左右されるが、昨年同時期の2018年の調達動向を鑑みると、昨年と同程度の水準で推移すると考えられる。

2019年上半期最も調達したのはティアフォー。現在のユニコーンは5社

2019年上半期の特徴として、まず設立経過後年数で見た場合、設立から1-5年の企業、つまりシリーズA、B程度の企業が占める金額割合が高い。

本記事では2014年以降のグラフを表示しているが、レポート本編では10年分の数値を確認できる

資金調達ランキングにもその結果が表れている。

(※)資金調達ランキングは2019/1/1-2019/6/30における資金調達の明細を集計対象としている。そのため、たとえばフロムスクラッチは約100億円の調達をシリーズDで行っているが、実行日の違いから、本集計では対象期間のみを資金調達総額として表示している。また、レポート本編では、残りの10社と設立年月日などの情報も確認できる。

2019年上半期もっとも資金調達額が大きかったのはティアフォーで80.2億円。出資元は損害保険ジャパン日本興亜、ヤマハ発動機、KDDI、ジャフコ、アイサンテクノロジー。これは昨年2月より行ってきたシリーズAで、本ラウンドの累計調達額は約113億円にのぼる。

資金調達額上位20社の顔ぶれをみると、2019年上半期は産業でみると自動車、宇宙など、従来から人気があった金融、ヘルスケア以外の領域に取り組むスタートアップで大型調達があった。

また、人工知能、機械学習といった技術に取り組んでいる企業も目立つ。

2019年7月以降、SmartHRやフロムスクラッチなど10億円以上の大型調達が複数出ているが、同様の傾向はつづく。

そして、BtoBサービスを手掛けるところが多いことにも気づく。

また、2019年7月にスマートニュースが資金調達を実施し、調達後企業評価額が1000億円を突破し、ユニコーンとなった。

最新の企業評価額上位を確認すると、ユニコーンはPreferred Networksを筆頭に現在5社である。

レポート本編では残りの10社と資金調達総額、最終新調達日、設立年月日などの情報も確認できる。

存在感が増す海外投資家

投資環境に簡単に触れる。2019年3月にグロービス・キャピタル・パートナーズの6号ファンドが設立。その出資者が国内外大手機関投資家が中心で注目が集まった。これまで国内ファンドのLPには機関投資家の出資割合が少ない中、当該ファンドへの機関投資家のLP出資割合が高かったからだ。最終募集を総額400億円にて6月に完了している。

また、2019年6月にグロースファンドであるTHE FUND(200億円)が、2019年7月に今後大きな成長が期待できる産業分野のスタートアップへ投資するInnovation Growth Fund(200億円)など、新しい形の大型ファンドの設立もみられている。

そして、これまで日本のスタートアップを投資対象としていなかった海外VC・海外機関投資家が初投資を行うケースが増えていることを特徴としてあげたい。

2019年下半期の投資も入るが、フロムスクラッチに対するKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)SmartHRに対するLight Street Capital、Kyashに対するGoodwater Capital、ココナラに対するFidelity International。米国に拠点をもつ投資家だけでなく、中国や韓国のVCからの初投資案件もある。

また、Salesforce VenturesやEight Roads Venturesは従来から日本への投資を行っていたものの、日本向けのファンドを設立し強化している。

他方、2019年5月に外為法に基づく対内直接投資等に改正告示があり、事前届出の対象業種に情報処理サービス業などが追加されることが告示された。国の防衛面からの施策ではあるものの、国内スタートアップの6-7割がITソフトウェア業であることから該当する企業が多いと考えられる。

対象業種に当てはまるスタートアップへ海外投資家が投資する前に事前届出を提出し、原則30日間の審査期間を経るというものである。

とくにシード・アーリー期のスタートアップは資金繰りを気にしながらの急成長の途にあるため、スピード感が重要であることに加え、日本のスタートアップへの海外資金が流入する兆しを見せる中で冷や水になるなど懸念の声もある。

2019年上半期はユニコーンとしてIPOしたSansanが話題に

2019年上半期におけるスタートアップのIPOは16件あった。

本記事では2014年以降のグラフを表示しているが、レポート本編では10年分の数値を確認できる

2018年6月にメルカリが上場して大きな話題となったが、2019年6月にも大型IPOがあった。名刺管理サービス「Sansan」を手掛けるSansanの上場だ。海外機関投資家などからも資金を集め、BtoB領域でユニコーンとなって満を持しての上場であった。

2019年下半期はステムリム、ツクルバが既に上場をし、Chatworkやギフティが上場を控えている。

マザーズへの新規上場数をみると前年並みに推移していることが確認できる。しかし、日本取引所グループ(以下、JPX)の「JPX 自主規制法人の年次報告 2019」において、内部管理体制等の課題から、2018年度は申請後に承認に至らなかった銘柄数が前年度から大幅に増え、46銘柄となったことを公表している。

レイターステージで上場準備にあるスタートアップもある中、上場審査の今後の動向にも注視したい。

(執筆:森敦子、デザイン:廣田奈緒美)

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【entrepediaデータの注意点】今後の調査進行により、過去分含めて数値が変動する可能性がある。本レポートは、あくまでも出所記載の基準日時点までに観測・確認ができているデータが基になる。 データはレポート巻末「情報ソース」より取得している。そのため、企業側の情報公表とentrepediaの観測タイミングなどにより、実際の調達日との差異が生じる。 通常、資金調達額が小さいほど、基準日に調達日の日時が近いほど観測が遅れる傾向にある。したがって、調達社数はこの影響をうける。 しかし、大型調達は即時公表される傾向が強いため、調査が進行しても金額のトレンドに大きな変動が生じることは考えにくい。 新しいファイナンス手法が出るなどし、従来と集計方法を予告なく変更する場合がある。その場合は過去分含めて変更し、経年での結果を公表する。最新の調査結果を常にご参照いただきたい。

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