起業して感じた機会損失。「日本初」株式投資型クラウドファンディングをやる理由

2019/07/19

「株式投資型クラウドファンディング」をご存知だろうか。

非上場株式の募集において、インターネットを通じて少額ずつ資金を集められる仕組みは、スタートアップの新たな資金調達手段として注目を集めている。

国内で累計成約額が20億円を超え、その領域において、国内で存在感を放っているのが、日本初の株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO(ファンディーノ)」だ。

しかし、FUNDINNOを運営する、日本クラウドキャピタル COO 大浦氏は、「全く金融の知識がない」状態で事業を始めたという。

金融業界には多くの規制があり、関わるステークホルダーの数も多いため、参入への障壁は他の業界に比べて高い。

にもかかわらず、なぜ知識ゼロのなか始めようと思ったのか。そこには、大浦氏が起業家として感じた「ある原体験」が関係していた。

株式投資型クラウドファンディングが持つ可能性

FUNDINNOはどのようなサービスですか。

FUNDINNOは、Web上から非上場のスタートアップに対して、投資ができるプラットフォームです。

スタートアップが資金調達をするとき、基本的にはベンチャーキャピタルやエンジェル投資家を回ることが多いと思います。

FUNDINNOはそういった投資家を通さずに資金を集めるために、サービスに登録している約1万7,000人のユーザーに募集内容を公開できるサービスです。

大きな流れはクラウドファンディングに似ており、私たちの審査を通過したスタートアップがFUNDINNO上に事業内容を掲載し、興味を持ったユーザーがそこに投資をする仕組みです。

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ファンディーノの仕組み(画像:公式ページ)

多くのクラウドファンディングと違うのは、株式を扱っていることです。事業内容を説明している動画もあるので、ぜひ見ていただければと思います。

2015年5月に金商法(金融商品取引法)が改正され、スタートアップがWeb上で資金調達をできるようになりました。

2017年4月にサービスを開始し、2年ちょっと運営されているサービスです。累計で20億円を超える成約額を達成しています。

サービス画面

応募中のプロジェクト例(画面:公式ページ)

株式投資型クラウドファンディングは世界ではメジャーなのですか。

この仕組み自体はアメリカで始まり、イギリスがもっとも伸びています。

イギリスでは、VCのマーケットが小さいこともありますが、クラウドキューブを筆頭に年々流入額が伸びており、株式投資型クラウドファンディングもVCの投資額と同程度の200万ポンドまで成長しています。

クラウドキューブから、評価額1,000億円超のユニコーン企業やイグジットの事例も出てきています。

日本では、まだ1人が1社に対して年間50万円までしか投資できないといった規制があり、海外に比べると多少遅れています。

しかし、年々取引額も増えており、市場として少しづつ前進していると感じています。

株式型クラウドファンディング

(出所)FCASEC日本証券業協会

始めたきっかけは起業家としての原体験

なぜFUNDINNOを起業したのですか。

もともと金融の知識はほぼありませんでした。大学院にいるときに、1社目を起業し、システム開発やアプリ・Web制作を行う会社を3年ほどやりました。

会社を成長させるために資金調達を試みましたが、バリュエーションや投資契約書の問題でなかなか決まりませんでした。その時ちょうど、海外で株式投資型クラウドファンディングが出てきたので、日本でもできるのではと考え、プロダクト先行でつくり始めたのが最初です。

自分も資金調達で苦労していたので、新しい調達の形を日本でもつくりたいと思い、いくつかの事業の1つとして始めました。

ちょうどそのタイミングで、金商法も改正され、実際に株式投資型クラウドファンディングもプラットフォームを運営できるようになりました。そこで、先行優位性を活かすために、そのとき手掛けていた他の事業を全て止め、この事業1本に絞り、取り組んでいくことを決めました。

金融知識がない中で、事業を一本に絞ることに躊躇いはなかったのですか。

むしろ、知識や情報がなかったから始められたと思います。

最初の見通しでは、3カ月ほどで証券を取り扱うための免許が取れると見込んで始めました。しかし、実際にやってみると、免許を取得できるまでに1年半かかりました。

ファンディーノ1 (2)

(写真:ami)

最初から1年半かかると分かっていたら、おそらく参入していません(笑)。

ただ走り始めてしまったからには止まれなかったので、生き延びるために資金調達を試みました。

VCに話を持っていくも、免許をもっていなかったので当然ウケはよくありません。しかし、エンジェル投資家や事業会社に相談したところ、構想に共感していただくことができ、なんとか資金調達ができました。

そういった資金調達に苦労した経験から、より「自分たちがやらなくてはいけない」と思い、今まで走ってきました。

運悪く、適当な投資家と出会えなかったことで、スタートアップが潰れるのは大きな機会損失です。それを無くすために、Web上で「誰でも公平に資金調達ができる世界」をつくりたいと思っています。

登録に1年半かかったのはなぜですか。

まず免許を取るには、社内規程や組織体制、ビジネスモデルなどについて、山のような書類の提出を求められます。

特にビジネスモデルの部分は、ビジネスの流れを文章やデモ画面、図を用いて、こと細かに書く必要があります。また、「この画面の遷移が金商法の第何条の中で、なぜ適正なのかを答えてください」といった質問を山のようにされます。

その質問にすべて答えると、更に新しい質問がくるといったやり取りが、1年間続きました。

初めのうちは業界の知識がなさすぎて、 社内規程も金商法を見ながらつくっていたので、それも時間がかかった要因の1つかもしれません(笑)。

当時は資金力もそんなにないので、かなりギリギリの場面もありましたが、当然当局側が私たちの資金を考慮して登録を承認することはありません。なので、最後までいつ終わるかが分からない状態で走り続けていました。

ただ、もう2度とやりたくはないですね(笑)。

文・写真:ami (後編に続く)

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