メルカリを始め大企業も導入。脅威の「正答率95%」を叩き出すAIチャットボットのカラクリ

2019/08/25

スタートアップ最前線 by ami

2019年時点で日本の人口は8年連続で減少し、生産年齢人口(16~54歳)の割合は昭和25年と並び過去最低を記録した。

働き手の減少により各業界で人材不足が叫ばれている。カスタマーサポートを請け負うコールセンターも例外ではない。働き方に起因する離職率の高さも相まり、業界は早急な対応を求められている。

その課題に目をつけたのが業界特化型AIチャットボット「KARAKURI(カラクリ)」だ。カスタマーサポートの支援に特化することで他サービスとの差別化を図っている。

その最たる例が「正答率95%保証」制度だ。

なぜコールセンター領域にその技術で挑むのか?目指すのはAIによる人材のリプレースなのか?

自身も長年働いたからこそ知る「コールセンターの真価」とは何か、カラクリ株式会社 小田CEOに伺った。

コールセンター 1.4兆円市場が秘めるポテンシャル

カスタマーサポート領域はコールセンターサービス市場で約9,000億円、コンタクトソリューション市場で約5,000億円ある。カラクリでは、このうち300億円が現状でAIに代替されていると考えている。

市場規模

また、NTTレゾナントの調べによると「チャットボット利用者の約半数が、不満を感じた経験がある」という結果が出ている。

チャットボット不満

不満を感じた理由として「回答が的確でない」が約60%にのぼった。この結果から既存のサービスは正確性に課題があることが窺える。

KARAKURIは、その「正確性」にフォーカスを当てサービスを展開している。

多くの企業が苦戦する中、一体どのようにして正答率95%を実現しているのか?その秘密含めKARAKURIの全貌を小田氏に聞いた。

退職率50%超。コールセンターの終わらない「繰り返し」

このサービスKARAKURIをつくるきっかけは、私自身がコールセンター業務を受託で行う会社で約14年間働いていたことにあります。

働く中で人材不足が現場の運営課題になっていると感じました。直近4~5年からその傾向が顕著になってきています。

コールセンターのアルバイトは他の職種よりも時給は比較的いい方です。なので、今までは地方のコールセンターでも人材を確保しやすい状態でした。

20190814 KARAKURI

小田 志門(おだ・しもん)/ 1980年京都府生まれ。2007年よりサイバーパトロール・インターネットのコールセンターBPOのイーガーディアン株式会社にて、取締役として営業部門、情報システム部門を担当。2017年10月にAIビジネス開発を支援するカラクリ株式会社を創業。(画像:ami)

しかし、「コールセンターは大変」といったイメージが広まってきていることもあり、いまは不人気職種になってしまっています。

カスタマーサポートの現場で「50%」という数字があります。これは「入社した月に辞めてしまう人」の割合です。

辞めてしまう大きな理由の1つに、単純作業の繰り返しが挙げられます。

カスタマーサポートの仕事を思い浮かべていただきたいのですが、例えばユーザーから「ログインできません」という質問がきたとします。

それに対して担当者は「ログインする方法はこちらです」と回答するわけですが、この作業は1日8時間ずっと繰り返すんですよね。その繰り返しが辛く辞めてしまう方も少なくありません。

その状況を解決する手段として、2016年辺りからチャットボットに注目し始めました。

当時Watson(IBMが提供する人工知能)を活用したチャットボットも出始め、人材不足の救世主として大手銀行が取り入れたといったリリースも出ました。

キーワードマッチなどの部分で技術レベルも上がっていたので、お問い合わせのサポートでの利用を私も考えました。しかし、現場で使うには技術的に足りていない部分もまだまだ多かったのも事実です。

それからもチャットボットの動向に注目していたところ、段々と現場で使えるレベルに近づいている感覚を持ち始めました。

タイミング的には後発だったのですが、ビジネスサイド、エンジニアリングサイドともに良い仲間と出会えたので起業に踏み切りました。

競合他社がコールセンター領域に対して、適切なソリューションを提供できていないと感じたのも起業理由の1つです。

数多くのチャットボットが世の中にありますが、そのうちの90%はFAQレベルのものです。基本的に100人が質問したら一通りの答えを返す形式になっています。しかしこれではまだカスタマーサポートを支援する上で十分ではありません。

KARAKURIではそういった足りない部分を変えようとしています。

「正答率95%」の実現

私たちが特に力を入れているのがボットの返信正答率です。

正答率を議論する上で、「とりあえず大量にデータをボットに機械学習させれば簡単に上がるのでは」といった声を聞きます。それはあくまでも対象としている領域の情報が大量にある場合に限ります。

たとえば雑談できるチャットボットをつくるのなら、Twitterの情報を大量に読み込ませたらいいかもしれません。しかし、それでは目的にあった回答は難しいです。

逆に、その業務領域に特化した情報を短時間で集められれば、高精度なものを作ることができます。つまり目的にあわせた回答をAIにさせるには、データの質をよくすることが非常に重要です。これが後発である私たちが勝てると考えた理由の1つでもあります。

そしてもう1つ、情報の精度を上げる仕組みがぬいぐるみです。

精度を上げるにはリリース後のデータ学習が欠かせません。もちろんサービス提供側で改善できる部分もありますが、それと同じくらい現場の方からのチャットボットに対するフィードバックが重要になります。そこがうまく機能するかどうかで会話の精度が大きく変わってくるんですよね。

からくり犬

(画像:カラクリ社公式資料)

サービスローンチ後にわかったことですが、この「積極的にフィードバックをもらえる環境」をつくりだすのが非常に難しいんです。

というのも、現場のオペレーターの方が「チャットボットに自分の仕事を奪われる」と恐怖心を抱いてることが多かったからです。

「10年後なくなる仕事ランキング」といった指標が出ていることもあり、ここ数年はAIといった技術に対して不信感をもつ人も増えています。

そこで、チャットボットは敵ではなく、カスタマーサポートチーム全体のパフォーマンスを上げてくれる新入社員の1人(仲間)と捉えてもらえるように、現場の感覚を変えられないかと考えました。

その打開策となったのがぬいぐるみです。

導入企業の1つがぬいぐるみに社員証を掛けて、チャットボットを社員に見立てていました。そうしたら現場のオペレーターの方が、チャットボットを怖がらずに仲間として受け入れたそうなんです。

これが予想以上に効果的で、弊社でも「カラクリ犬」というぬいぐるみをつくって配ったところ、同様の成果を得られました。

大きいものだと、人と同じ大きさのぬいぐるみも用意しています(笑)。

ぬいぐるみを導入したことで現場のチャットボットのオペレーティングからのデータフィードバックの質も良くなり、チャットボットの正答率も向上する好循環が生まれました。

3つの強みをもつ「KARAKURI」

現在チャットボットサービスはレッドオーシャンと言われるほど増えていますが、導入企業がそこまで増えていない理由の1つに、運用面の不安が挙げられます。

KARAKURIでは正答率を保証していますが、それ以外に運用の不安に応える3つの強みをもっています。

3つの強み

(画像:カラクリ社公式資料)

1つ目は、チャットボットを導入する前の分析を深くすることです。

カスタマーサポートは、基本的にユーザーが疑問やトラブルを感じたときに発生する業務です。その中でも「登録ができない、ログインできない、利用できない、利用確認・変更ができない、返品・退会できない」のどれかが原因になっていることが圧倒的に多いです。

ユーザーがチャットボットを利用するように仕掛けるのではなく課題の根本的な解決をサポートします。チャットボットの導入を前提としない解決策を、まずは提案させていただいています。

例えば「ログインできない」という質問について、どんな領域のユーザーがなぜ困っているのかを分析し、同様の疑問が再び起きないように該当箇所の動線の再設計を提案しています。

2つ目は、チャットボット導入時に発生する面倒な作業を全て代行していることです。失敗しないチャットボットをつくるには2つの条件があります。

KARAKURI失敗しない特徴2つ

(画像:カラクリ社公式資料)

チャットボットの「会話の設計」と「導入後の運用」です。

チャットボットでは、吹き出しの中にどんな文章を表示させるのか、どういった導線でシナリオを組むかを事前に設計する必要があります。そういった設計業務を全て代行しています。

工程表

(画像:カラクリ社公式資料)

またチャットボットの運用開始後も、現場のカスタマーサポートの方が無理なく運用ができるUIとなっています。

ボットの会話の正答率は、質問に対する回答の正誤判断と、新たな質問に対して正しい答えを追加しつづけることで精度が上がります。しかし、この更新作業に手間がかかる場合が少なくありません。そこでExcelより簡単な操作で、スマホからも行えるUIを実装しました。これにより、運用する方の負荷を大幅に軽減しています。

運用・管理が難しいと思われがちなAIを、自分達をサポートをしてくれるものと感じてもらえる設計を徹底的に考えました。

運用UI

(画像:カラクリ社公式資料)

3つ目は、パーソナライズドされた応答が可能な点です。

世の中のチャットボットの多くは、質問に対して1通りの答えを返す「FAQレベル」のものばかりです。私たちはそのレベルを突破して、質問者に最適な解を返せるものをつくっています。

例えば、ECサイトであれば配送状況について質問がきた場合、FAQレベルだと「マイページのここを見なさい」といった回答で終わります。しかしKARAKURIでは、商品の選択や配達日の指定など、マイページ上で行うことを全てチャットボット上で対応できるように開発しています。

もちろん全ての質問には答えられないので、その場合はチャットボットから有人チャットなどにバトンタッチして対応する仕組みをとっています。

カスタマーサポートの支援が全て

これからKARAKURIを通して提供したい価値は2つあります。

1つ目は、カスタマーサポート部門の会社への貢献度を視える化したいと思っています。KARAKURIではチャットボットがどのくらい働いたかを「ボット経済価値」として算出し、導入企業に毎月提供して成果を実感してもらっています。「今月KARAKURIは2,000万円分働きました」といったイメージです。

それと同様に、カスタマーサポートの役割が経営にどの程度貢献しているかも数値化していきたいです。例えば「ログインできません」というユーザーの問題を解決しても、それが会社にとってどれだけの価値を与えているのかは数値として表われません。機械学習を使って、そういった定量化できていない貢献を数値化していきたいです。それを実現するためであれば、チャットボットに関わらず、積極的に導入していくつもりです。

2つ目はコールセンターの人が本質的な課題解決に集中できるようにしたいです。

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(bbernard/Shutterstock.com)

今のコールセンターは厳密に行動やルールが決まっており、少しでもそれと違う行動をとるとミスになってしまいます。ただ人間の価値は、「標準化されていない」「バラツキある」といったAIとは逆の部分にあるんじゃないでしょうか。

Aさんに問い合わせたらAさんの個性を感じられる回答のほうが、今後は価値として認められると思いませんか。

標準化できる対応はチャットボットで自動化し、人の介在価値のある部分に集中して、より価値のある体験をユーザーに提供する。そのためにチャットボットを使って欲しいですね。

本来コールセンターは顧客との接点部門なので改善のヒントが詰まっており、「利益を生む場所」と言っても過言ではないと思います。しかし多くの企業でコストセンターと言われることもあります。あまりにも切ないと感じます。

カラクリは、チャットボットに限らず、人がより良いユーザー体験を生みだすためのプラットフォームを今後も開発していきたいです。

そのために今、組織づくりに注力しています。

マーケティングやセールス、カスタマーサクセス、エンジニアなど全方位で採用活動中なので興味がある方がいらっしゃれば、ぜひご連絡ください。

20190814 KARAKURI-4

聞き手:松岡遥歌、文:町田大地

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